壁が語らないという選択 ―― 珪藻土仕上げの沈黙

内村工業が手掛ける珪藻土仕上げは、機能や性能を前面に押し出す左官ではありません。珪藻土は、粒子が重なり合い、層として定着することで初めて壁として成立する素材です。その粒度、練りの強さ、コテの運びによって、表面は語り過ぎない静けさを獲得します。左官の仕事は、質感を与えることではなく、どこまで手を入れ、どこで止めるかを判断すること。特殊左官としての珪藻土施工では、均一さを目指すのではなく、空間が落ち着く密度を探ります。デザイン左官の現場では、光が当たったときに初めて立ち上がる陰影や、視線が流れる距離感を意識し、壁が背景として機能する状態をつくります。大阪左官として培った経験は、過剰な表情を抑える判断として現れ、珪藻土は空間の主役にならず、しかし確実に空気の質を変えます。内村工業は、珪藻土仕上げを通して、左官を「目立たせる技術」ではなく、「空間を静かに支える技術」として実装しています。

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