無くなってからでは遅い。押さえ鏝が決める最終精度

手に取ると、押さえるための道具であることがすぐに伝わる。梶原敏孝による別打ち押さえ鏝、210㎜・240㎜・270㎜。仕上げ工程で面を締め、質感を整えるための左官鏝だが、その役割は単純ではない。鋼の粘りと返り、刃先のわずかな丸み、柄を通して伝わる抵抗が、押さえの圧と抜きの判断を微細に変化させる。同じ工程でも、この鏝でなければ出ない面がある。左官道具としての鏝は、形やサイズだけで語れるものではなく、使い手との関係の中で精度が立ち上がる。マイクロセメントのような繊細な材料ほど、その差は顕著に現れる。特殊左官の現場では、この一手の違いが空間の完成度を左右する。こうした別打ちの鏝を打ち出す鍛冶の仕事は、確実に減っている。求められる精度に応える道具ほど、静かに姿を消していく。無くしてからでは手に入らないものがある。内村工業株式会社は、そうした左官鏝と共に空間を仕上げている。

ページトップへ