無くなってからでは遅い。鏝が決める左官の精度

手にした瞬間にわかる重みがある。梶原政一のナゼ鏝、180㎜。仕上げ用として扱われるこの左官鏝は、単に材料を延ばす道具ではなく、面の精度を決定づけるための“応答”を返してくる。鋼のしなり、先端のわずかな返り、柄から伝わる抵抗。そのすべてが、塗り付ける圧や引き際の判断に影響を与える。左官道具としての鏝は、形状やサイズの違い以上に、使い手との関係性の中で性能が立ち上がる。だからこそ、同じマイクロセメントでも、仕上がりに差が生まれる。特殊左官の現場では、この差異が空間価値を分ける決定的な要素となる。こうした鏝を打ち出す鍛冶の仕事は、静かに減り続けている。必要とされる精度に応える道具ほど、市場には残らない。失われてからでは手に入らないものが、確かに存在する。内村工業株式会社は、そうした左官鏝と共に、いまの空間をつくっている。

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