左官鏝はなぜ消えていくのか|やまさ半焼ハリ通し鏝という選択

やまさ製の半焼ハリ通し鏝。刃幅約45mmと60mmの二種は、入隅や細部の押さえ、ライン出しに用いられる左官鏝です。先端のわずかな反りと、半焼による適度なしなりが、材料を引きずらずに面を整え、狙ったところで止めることを可能にします。均一に見える仕上げの中に、エッジの精度や収まりの良さとして差が現れるのは、この種の鏝の働きによるものです。鏝は単なる道具ではなく、仕上がりを決定づける“間”を扱います。厚みの取り方、押さえの圧、角の抜き。数ミリの差が質感を変え、光の返り方を変えます。やまさの半焼ハリ通し鏝は、その繊細な調整に応える数少ない一本です。近年、このような鏝は徐々に姿を消しつつあります。鍛冶の手で一枚ずつ仕立てられる刃は、量産では置き換えがききません。必要になった時に、同じものが手に入るとは限らない。だからこそ、今ある道具を使い、残すことがそのまま技術の継承になります。内村工業株式会社は、特殊左官の現場において、こうした道具とともに仕上がりを積み重ねています。

ページトップへ