見た瞬間に、決めていないか|左官の判断を狂わせる思い込み

見た瞬間に、決めてしまっている。それが、ズレの始まりになる。過去にうまくいった感覚、経験として蓄積された手順。それらは本来、判断を助けるためのものだが、同時に視野を狭める要因にもなる。似ていると感じた時点で、違いを見なくなる。確認しているつもりでも、見ているのは“知っている形”だけであり、目の前の状態ではない。壁も床も、毎回条件は異なる。下地の吸い込み、湿度、気温、素材の反応。そのすべてが微妙に変化しているにもかかわらず、「いつも通り」で進めた瞬間に、判断は現場から離れる。思い込みは、精度を上げるためにあるのではない。精度を下げる方向にも、同じだけ働く。疑っているかどうかではなく、疑い続けているかどうか。そこに、仕上がりの差が現れる。


