第6章|判断はどこで生まれるのか|左官の基準はどこにあるのか
左官の判断は、頭で考えて生まれるものではない。かといって、手先の感覚だけでもない。目に映る面、手に伝わる抵抗、鏝が滑るわずかな変化。それらを一つひとつ意識しているうちは、判断はまだ遅い。繰り返しの中で蓄積された感覚は、やがて意識の外に沈む。見る前に違和感を捉え、触れる前に次の一手が決まる。そのとき、判断は“考えるもの”から“すでに在るもの”へと変わる。材料の状態や環境条件は常に変化する。それでも仕上がりが安定するのは、外側の情報ではなく、内側に基準があるからだ。壁であっても、床であっても、什器であっても、その基準は揺らがない。どの面に対しても、同じ精度で向き合える理由は、判断が外に依存していないためである。左官とは、状況に対応する仕事ではない。積み重ねた感覚の中から、すでに答えを持って現場に立つ仕事である。内村工業株式会社は、その基準を積み重ね、空間の質を成立させている。