なぜ仕上がりはズレるのか|左官の判断が狂う瞬間

第5章|なぜ仕上がりはズレるのか|左官の判断が狂う瞬間

仕上がりのズレは、技術の不足によって起こるものではない。判断が、外れた瞬間に生まれる。材料は同じ、工程も同じ。それでも仕上がりが変わるのは、“どこを完成とするか”の基準が揺らぐからだ。現場には常に情報が溢れている。下地の状態、気温や湿度、材料の反応、光の入り方。それらを追いすぎた時、判断は外側へ引っ張られる。本来、見るべきは“今つくられている面”である。だが、周囲の条件に意識を奪われた瞬間、手は本来の止めどころを越えてしまう。あるいは、止めるべきところで止まれなくなる。ズレは一瞬で生まれる。そして、その一手は戻らない。重要なのは、情報を集めることではない。その中で、何を捨てるかだ。左官の判断とは、すべてを考慮することではない。“必要なものだけを残し、他を切り捨てる行為”である。内村工業株式会社は、その判断の精度によって、仕上がりを成立させている。

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