名工の鏝|失われゆく至宝と、今を生きる道具






左官仕上げの質感は、材料だけで決まるものではありません。壁や床、什器の表情を整える最後の工程で、仕上がりを左右するのが鏝という道具です。左官職人が手にする鏝には、それぞれ用途があり、形状や厚み、重さが微妙に異なります。仕上げの質感を決めるためには、素材や工程に合わせた鏝の選択が欠かせません。写真の鏝はやまさ製作所のモルタル押さえ鏝 八寸(約240mm)。主にモルタルや塗り壁の表面を押さえ、平滑に整える工程で使われる鏝です。刃先のしなりと重量のバランスが絶妙で、塗り重ねた材料を均一に締めながら、表面の粒子を整えていきます。壁面仕上げや意匠左官、テクスチャ仕上げなど、特殊左官の現場でも欠かすことのできない一本です。こうした鏝は、左官職人のために鍛冶職人が一丁ずつ鍛え上げる道具です。鋼の焼き入れや研ぎの仕上げによって生まれる刃のしなりは、長年の経験を積んだ鍛冶の技術によって支えられています。しかし、このような伝統的な鏝を作る職人は年々少なくなり、今では手に入れることが難しい道具も増えてきました。
左官の仕事は、材料と技術だけではなく、こうした道具とともに受け継がれてきたものです。壁や什器、空間に現れるテクスチャの背後には、道具を生み出す鍛冶の技術と、それを扱う左官の仕事があります。内村工業株式会社 は、こうした伝統的な道具と技術を大切にしながら、建築や店舗空間における特殊左官の施工を行っています。左官という仕事を支える鏝の存在もまた、仕上げの質感を生み出す大切な要素です。


