やまさ化粧打ち鏝とは何か ― 平鏝・角鏝・元首鏝・柳刃鏝に宿る左官の判断 ―

【やまさ化粧打ち鏝(水鏝・撫鏝富士引き鏝)】
平鏝/角鏝/元首鏝/柳刃鏝 左官の現場で鏝は、仕上げの意図だけで選ばれるものではない。素材の状態、湿り、気温、下地の呼吸。その場の条件に導かれるように、手が自然と鏝を選ぶ。やまさ化粧打ち鏝(水鏝・撫鏝富士引き鏝)は、化粧打ち仕上げにおいて材料を押さえすぎず、動かしすぎないための鏝だ。表層の密度を整えながら、土やモルタルの表情を殺さない。水分量と鏝圧の“間”を読むための道具である。平鏝は面を整え、角鏝は線を決める。元首鏝は入隅・出隅に生まれる緊張を制御し、柳刃鏝は微細な起伏や揺らぎを受け止める。同じ名称の鏝であっても、反り、厚み、鋼の粘りが違えば、使い手の身体の動きは変わる。だから鏝は単なる道具ではなく、左官の判断そのものになる。これらの鏝を鍛える鍛冶屋は、図面ではなく現場を知っている。鏝圧の逃がし方、返しの瞬間、材料が動く一拍。その感覚を鋼に宿らせるから、余計な力を加えずとも仕上がりが決まる。使い込むほどに、鏝が手の一部になる理由だ。だが、こうした鏝は確実に減っている。量産では生まれず、失われてから探しても同じものは戻らない。内村工業株式会社が名工の鏝を使い続けるのは、特殊左官の精度が、道具と文化の継承に支えられていることを知っているからだ。鏝は過去ではない。今も現場で生き、空間の質を決定づけている。

ページトップへ