磨くとは、余計な操作をしないこと ― やまさ磨き鏝6寸

やまさ磨き鏝六寸は、仕上げを整えるための道具ではない。表面が応答する限界を、静かに引き出すための鏝である。水鏝や撫で鏝として使われるこの一本は、力を加えるほど仕事をするわけではない。むしろ、力を抜いたときにだけ、素材の声が立ち上がる。鋼に宿る粘りと硬度は、鏝を走らせた瞬間ではなく、止めた瞬間に差を生む。磨きの工程で重要なのは、動かし続けることではない。どこで触れ、どこで離すか。その判断が、表面の密度を決め、光の吸い込み方を変えていく。六寸という寸法は、短すぎず、長すぎない。手首から先の微細な動きを、そのまま壁面へ伝えるための長さだ。強く押さえなくても、鏝の自重と角度だけで、仕上げは自然に締まっていくこの鏝は、仕上げを急がせない。完成を主張しない代わりに、完成度だけを残す。磨くとは、削ることではなく、余計な操作をしないと決めること。やまさ磨き鏝六寸は、その判断を手に覚えさせる名品である。

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