左官とは、止めどころを見極める仕事である

緑青仕上げは、色をつくる仕事ではない。どこで止めるか、どこまで重ねるか。その判断の積み重ねが、最終的な表情を決める左官仕上げだ。銅が酸化し、時間と環境によって生まれる緑青の表情は、均一を目指した瞬間に破綻する。湿度、温度、下地の吸い、鏝の圧。一つでも読み違えれば、意図しないムラとして残る。だから左官は、常に「次の一手」を身体で判断し続ける。塗り進める勇気よりも、あえて止める決断の方が難しい。緑青仕上げにおいて重要なのは、完成させることではなく、空間として最も美しい地点で手を離すことだ。この判断は、マニュアルでは身につかない。施工を重ね、失敗を知り、感覚として蓄積された経験があって初めて成立する。内村工業株式会社が向き合ってきた左官とは、仕上げ材を扱う仕事ではなく、空間の完成度を見極める技術そのものだ。緑青は語らない。しかし、正しい判断で止められた壁は、空間の質を静かに引き上げる。それが、左官という仕事の本質である。

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