表情は、判断のあとに現れる。|左官という選択

壁なのか、オブジェなのか。あるいは空間そのものなのか。このテクスチャーを前にすると、左官という仕事の輪郭が一度、曖昧になる。金属の酸化が生む深度、重なり合う色層、コテが離れた瞬間にだけ現れる緊張感。それらは偶然ではなく、下地の読み、材料の反応、乾きの速度を含めた判断の積層によって導かれている。表情を「つくる」のではない。出るべき表情が、ここで現れているだけだ。左官の判断とは、手を動かす前にほぼ終わっている。この面はどこまで受け止められるか。どこで抑え、どこで逃がすか。空間のスケール、光の入り方、視線の高さ──それらを無言のうちに整合させ、最後にコテを入れる。内村工業株式会社が向き合っているのは、仕上げ材そのものではない。空間に定着する「判断の質」だ。だからこそ、壁に留まらず、什器や造作、オブジェへと応用が広がっていく。この一面は、完成形ではない。判断の記録であり、次の空間への前段だ。左官がどこまで空間を担えるのか──その答えは、まだ続いている。

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