触れる前に、伝わる質感

空間を調律するのは、理屈ではない。壁に触れた瞬間に伝わる、わずかな抵抗や湿度、その場に溜まる空気の重さ。私(内村順一)が手がけるUKアートパネルは、そうした「言葉になる前の感覚」から立ち上がる。スペイン製マイクロセメント〈トップセメント〉という無機質な素材に、指先の記憶だけを頼りに静かに介入する。塗り重ね、削ぎ、待つ。その一つひとつの所作が、壁面に呼吸を与えていく。静謐な色層は、水の流れや風の余韻のように重なり合い、狙いきれない偶然性が、二度と再現できない表情を残す。それは装飾ではなく、空間そのものの調律。設計者が求めるのは、説明ではなく、空間に宿る確信だ。大阪を拠点に、特殊左官という技術領域を越境しながら、内村工業株式会社は、壁面を「空間の核」へと変えていく。静かで、しかし圧倒的。この質感の奥行きが、空間に品格と余白をもたらす。

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