漆黒は、均一である必要はない。トップセメント・アルコセムベーシックカラーHUMO漆黒を用いたこのUKアートパネルは、黒を“塗る”のではなく、“起伏として立ち上げる”ことで成立している。面全体に施されたモールディングは、光を反射させるための装飾ではなく、触覚を伴う量感として壁に定着している。
表層を走る有機的なラインは、描かれた線ではない。盛り、押さえ、削る工程の中で、素材が最も緊張する瞬間に導かれた痕跡である。コテを滑らせるのではなく、止め、迷い、わずかに躊躇する。その身体の揺らぎが、線に不均一なリズムを与え、漆黒の中に奥行きを生む。左官アーティスト・内村順一は、モールディングを形として完成させるのではなく、空間との関係性が定まる地点まで仕上げを留める。黒の凹凸は照明や距離によって表情を変え、時間の経過とともに存在感を更新していく。
UKアートパネルは壁面装飾ではない。空間の重さ、静けさ、緊張感を調律するための、ひとつの構造体である。



