受け継ぐための左官

長い時間をかけて受け継がれてきた欄間には、装飾以上の記憶が宿っている。内村工業株式会社では、その価値を失わせることなく、トップセメントを用いて「UKアートパネル」として再構築する試みを行った。目的は保存でも復元でもない。欄間が持つ時間の厚みを、現代の空間に耐えうる表現へと昇華させることにある。

木が刻んだ陰影や彫りのリズムは、そのまま残しつつ、左官の面によって新たな余白を与える。主張を重ねるのではなく、異なる素材同士が静かに共存する関係性を整えていく。トップセメントの質感は、欄間の記憶を覆い隠すのではなく、受け止め、次の表情へと導く役割を果たしている。この制作では、完成形を先に決めすぎないことを大切にした。素材が発する情報に耳を澄まし、どこまで手を入れ、どこで止めるかを身体で判断する。その積み重ねが、装飾でも骨董でもない、新しい「面」としての存在感を生み出している。UKアートパネルとして生まれ変わった欄間は、過去を飾るためのものではない。受け継がれてきた時間を、これからの空間へ手渡すための装置である。内村工業株式会社は、壊さず、消さず、価値を更新することで、素材の記憶を未来へつなげている。

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