触感から設計されたベンチ














公共施設に設けられたベンチを、トップセメントによる研ぎ出し仕上げで構成した事例。
不特定多数の人が触れ、腰を下ろし、時間を過ごす場所において、素材には視覚的な強さよりも、触れた瞬間の安心感と耐久性が求められる。研ぎ出し仕上げは、その両立を可能にする左官表現である。施工では、座面・立ち上がり・エッジそれぞれで研ぎの番手と圧を変え、触れたときの感触を身体で確認しながら工程を進めた。滑らかすぎれば公共空間としての緊張感を欠き、粗ければ使用感に影響する。その中間を探る作業は、数値ではなく手の感覚が基準となる。骨材の表情を適度に残すことで、視覚的な表情と実用性のバランスを保っている。トップセメントの研ぎ出しは、装飾のための仕上げではない。人が集い、使い続けることで完成していく「場」を支えるための左官技術である。時間とともに磨かれ、公共空間の一部として定着していく。その過程までを見据えた仕上げが、このベンチには求められている。


