時間を壊さず、更新する壁

長い時間を重ねてきた古民家の壁面に、トップセメント№26リケンを用いた壁仕上げを施したリノベーション事例。
この色は、単なるグレーではなく、土・石・空気の層を内包したような静かな深みを持つ。既存の柱や梁が刻んできた時間と衝突せず、むしろその背景として自然に溶け込む点に、この素材の本質がある。施工では、下地のわずかな歪みや壁面の湿度、光の入り方を身体で読み取りながら、塗り重ねのリズムを調整した。均一に整えすぎないことで、古民家特有の揺らぎや陰影が表情として立ち上がる。

トップセメントは「新しさ」を主張する素材ではない。空間に残された記憶を受け止め、今の暮らしに静かに更新するための左官材である。

過去と現在が無理なく共存する壁。そこにあるのは、装飾ではなく、時間をつなぐための左官の仕事だ。

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