輪郭を引き締める黒 ―― アルコセム№6ニグロの側面仕上げ

什器カウンターの側面は、正面ほど語られず、しかし空間全体の印象を左右する重要な面である。トップセメント・アルコセム ベーシックカラー№6「ニグロ」を用いた本仕上げは、その“脇役”としての役割に静かな強さを与えている。ニグロの深い黒は、光を吸収し、輪郭を際立たせる。周囲の素材や色彩を引き締め、カウンター全体の存在感を過不足なく整える効果を持つ。主張ではなく、構成を支えるための黒。その選択が、空間の完成度を一段引き上げる。施工では、色ムラが最も顕著に現れるため、下地処理と塗り重ねの精度が問われる。アルコセムは反応が鋭く、コテ圧や乾きの差がそのまま表情に現れる素材だ。均一さを目指しながらも、わずかな揺らぎを許容する判断が、無機質になりすぎない質感を生む。什器は触れ、近づき、使われる存在である。だからこそ、側面に宿る質感は空間体験の一部となる。内村工業は、素材の性能と左官の身体感覚を重ね合わせることで、什器の一面に静かな説得力を与えている。

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