沈黙の色を仕上げる ―― 北新地・会員制空間、階違い男性用トイレのトップセメント左官

トップセメント|男性用トイレ壁面(階違い)
北新地 会員制飲食店
アルコセム ベーシックカラー No.6〈ニグロ〉仕上げ

北新地の会員制飲食店における男性用トイレは、空間の緊張感と落ち着きが同時に求められる場所です。本事例では、トップセメント・アルコセム ベーシックカラー No.6「ニグロ」を用い、階違いによって生じる光量や天井高の差を前提に、壁面の密度と色の深さを調整しました。

ニグロが持つ沈んだ色調は、均一に塗るだけでは重くなりすぎます。材料の締まり具合や乾きの進行を身体で感じ取り、コテ圧をわずかに変えながら層を重ねることで、表面には微細な陰影と奥行きを残します。光が直接当たらない場所ほど、質感の差ははっきりと現れ、空間全体に静かな存在感を与えます。

トップセメントは素材として完成されているからこそ、仕上げる側の判断がそのまま表情となって現れます。男性用トイレという機能的な場においても、階が違えば空気は変わる。その差異を読み取り、同一店舗内で統一感と変化を両立させることが、左官の身体知が最も試される部分です。
素材の力を引き出し、空間の質を底上げする。その役割を、この一壁が静かに果たしています。

ページトップへ