無垢を仕立てる|セメント色が什器になる瞬間












装飾を削ぎ落とした先に残るのは、素材そのものの強度と、手の判断だけだ。エボリューション マイクロデッキMに、アルコセム ベーシックカラー№14〈セメント〉を用いた什器仕上げは、均質さよりも「安定した揺らぎ」をどう残すかが完成度を左右する。セメント色は誤魔化しが利かない。コテの角度が立てば影が出る。寝かせ過ぎれば面が眠る。その中間を、施工中の光と距離感で微調整していく。什器は触れられる前提で成立する。手が触れ、物が置かれ、視線が止まる。その使用環境を想定し、角は強く、面は柔らかく仕立てる。硬質な印象の中に、冷たさだけを残さないため、層の厚みと研ぎのタイミングを現場で判断することが不可欠となる。
完成した表情は、無機質でありながら空間に溶け込む。主張はしないが、空間の基準点として静かに存在し続ける什器。量産品にはないこの安定感は、材料性能だけでは生まれない。セメント色を「素材」で終わらせず、「空間の骨格」として成立させる。それが、トップセメントと左官の技術が交差する場所である。


