使われ方から組み立てる洗面台什器|モールテックス仕上げ



洗面台という什器は、空間の中でもっとも人の所作に近い存在です。手を伸ばし、水に触れ、視線を落とす。その一連の動きを受け止めるため、今回のモールテックス仕上げでは「美しさ」より先に「使われ方」を読み取ることから施工を組み立てました。天板や立ち上がりに残るわずかな表情差は、意図的に均質さを崩した結果です。水の跳ね方、光の反射、指先が触れる位置──それらを想定しながら、塗り重ねのリズムやコテ圧を微調整しています。モールテックスは高い耐水性と強度を備えた素材ですが、性能だけでは空間に馴染みません。湿度や下地の状態、その日の気温を身体で捉え、最適なタイミングで手を入れることで、初めて什器としての落ち着きが生まれます。使い続けることで現れる微細な変化も含め、この洗面台は完成へと向かっていきます。日常に最も近い場所だからこそ、左官の判断と手の記憶が、静かに息づく仕上げとしました。


