空間に馴染む什器 ― デコリエ仕上げ



什器は空間の中で最も人の身体に近い存在です。触れる、寄りかかる、回り込む。その距離の近さがあるからこそ、デコリエ仕上げでは視覚だけでなく、触れたときの感触や安心感まで含めて設計しました。表情をつくり込みすぎず、しかし単調にもならない。その曖昧な境界を探りながら、鏝の動きと素材の反応を丁寧に読み取っていきます。デコリエは軽やかな意匠性を持つ一方で、施工時の判断が仕上がりを大きく左右します。下地の状態、室内環境、乾きの速度。それらに応じて手を止め、進め、時には戻る。その積み重ねが、均質ではない奥行きとして什器に残ります。意図的に揺らぎを残すことで、使われるほどに空間と馴染んでいく質感が生まれます。
内村工業では、什器を「見せるための造形」としてではなく、空間の動線や用途を支える要素として捉えています。素材の性能に頼るのではなく、どう触れ、どう使われるかを想像しながら仕上げを組み立てる。完成した什器は主張しすぎることなく、日常の中で静かに存在感を深めていきます。


