迎え入れる壁。モールテックスによるエントランス左官

建物に足を踏み入れた瞬間、空間の印象を決定づけるのがエントランスの壁面です。本施工では、モールテックスを用い、迎え入れるための壁として過不足のない存在感を目指しました。主張しすぎず、しかし記憶には残る。その微妙な距離感を、左官の手仕事によって整えています。モールテックスは均質な表情をつくることも可能な素材ですが、内村工業ではあえて揃えすぎない選択をしました。塗り重ねの速度、コテの角度、押さえる強さ。その一つひとつを現場の空気や光の入り方に合わせて調整し、壁面全体が一枚の面として呼吸するような質感をつくり込んでいます。図面では指定できない領域を、手の感覚で埋めていく工程です。エントランスは、立ち止まる人も、通り過ぎる人もいます。近くで見たときの密度と、離れて見たときのまとまり。その両方が破綻しないよう、細部と全体を往復しながら仕上げを進めました。完成形を急がず、素材の反応を待ちながら判断を重ねていくことで、時間に耐える壁が立ち上がります。装飾ではなく、空間の基準としての壁。モールテックス仕上げによるエントランス壁面は、訪れる人の感覚を静かに整え、建物の姿勢そのものを伝える左官仕事です。

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