静かな季節を留める ―― モザイクアートタイル《Vase of January|1月の花瓶》

《Vase of January(1月の花瓶)》は、花が主役ではない。花を支える器、その周囲に漂う空気、そして冬の時間そのものをすくい取るように構成されたモザイクアートタイル作品である。1月という季節が持つ、張りつめた静けさと、わずかな光への期待が、画面全体に沈み込んでいる。

タイルは細かく分節されながらも、強い輪郭を主張しない。近づくと一枚一枚の角度や厚みの違いが現れ、離れると一つの柔らかな塊として像を結ぶ。その距離による印象の変化が、鑑賞者の身体感覚を自然に揺さぶる。色彩は抑制され、冷えた光と温度を含んだ陰影が共存する。冬の室内に差し込む朝の光、花瓶の縁に触れた指先の冷たさ、そうした感覚が、説明なく立ち上がる構成だ。華やかさではなく、留まること、待つことの美しさが選び取られている。配置は整いすぎず、わずかなズレが意図的に残されている。その不均衡が、静物に時間を与え、完全に止まらない状態を保たせている。完成してなお、どこか呼吸を続けているような佇まいだ。《1月の花瓶》は、季節を描写する作品ではない。季節が身体に触れた痕跡を、タイルという硬質な素材に沈めた一枚である。見る者の記憶と重なったとき、初めて花がそこに咲く。

制作:内村貴子

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