疫を祓う輪郭 ―― モザイクアートタイル《令和のアマビエ》



《令和のアマビエ》は、民間信仰の図像を再現するための作品ではない。未知への恐れが社会を覆った時間、その中で人々が無意識に求めた「拠り所」を、モザイクアートタイルという物質に定着させた試みである。疫病退散という言葉が日常に溶け込んだ時代背景を、直接的なメッセージではなく、かたちとリズムで受け止めている。
タイルは一枚ごとに表情が異なり、完全な均質を拒む。輪郭は明確でありながら、近づくほどに揺らぎが生まれ、視線は自然と周縁へと流れていく。その不安定さが、見えないものに対する畏れや祈りの感覚を呼び起こす。色彩は強く主張しない。沈んだ色と淡い光沢が混在し、照明や時間帯によって印象が変化する。静かな表情の中に潜む緊張が、空間に留まり続ける構成だ。祝祭でも、恐怖の象徴でもない。その中間にある感情を、タイルの集合体として組み上げている。制作過程では、配置の微調整を繰り返し、意図と偶然の境界を探り続けた。整えすぎないことで、祈りが持つ原初的な不確かさを残すためである。《令和のアマビエ》は、願いを押し付けない。ただ、見る者それぞれの記憶と重なり合い、静かにそこに在り続ける。疫の時代を越えてもなお、空間に沈殿する感情の痕跡として。


