名を刻むのではなく、形に滲ませる ―― 階段・ネームプレート造形仕上げ




この階段におけるネームプレートは、後付けのサインではない。文字を載せるための板でも、視認性を優先した表示物でもなく、階段そのものの造形行為の中で生まれている。内村工業のデザイン左官は、まず「名をどこに置くか」ではなく、「この階段がどう立ち上がり、どう人を導くか」を身体で捉えることから始める。
下地形成の段階で、踏面と蹴上げの流れ、視線の高さ、歩行リズムを想定しながら造形を組み立てる。ネームは彫るのではなく、盛りと削りの連続によって輪郭を浮かび上がらせる。そのわずかな高低差は、光の当たり方によって初めて認識される程度に抑えられている。鏝を当てる角度、引き上げる速度、止める位置。そのすべてが文字の表情を左右するため、作業は極端に遅い。だが、その遅さこそが、工業的なサインにはない緊張感を生む。読むための文字ではなく、空間に「気配として存在する名前」へと変換されていく。アルチザンの身体知とは、情報を削ぎ落とし、意味だけを残す技術だ。内村工業は、階段という動線に、名を刻むのではなく、空間の一部として滲ませる。これが、デザイン左官によるネームプレート造形の本質である。


