形状が先か、手が先か ―― 什器・デコリエ仕上げ



この什器において、意匠は図面で完結していない。曲線の立ち上がり、エッジの鈍さ、天端から側面へ落ちる重力の流れ。その最終形は、デコリエを塗り重ねる左官の身体感覚によって定義されている。内村工業の左官は、形をなぞるのではなく、形が成立する瞬間を手の中で探る。デコリエは、均一性を求めれば無機質にもなり得る素材だ。しかし、この什器では鏝圧を微妙に変え、あえて面に静かな揺らぎを残している。光が当たったとき、完全なフラットではないことに気づく程度の差。その「わずかさ」が、什器を工業製品ではなく、空間の一部として馴染ませる。曲面部分では、鏝を止める位置が常に変化する。止めすぎれば角が立ち、流しすぎれば輪郭が曖昧になる。その境界を身体で判断し続けることで、什器は触れられずとも「触感」を想像させる存在になる。内村工業の左官は、アルチザンの身体知を通して、什器を単なる家具ではなく、空間の重心として定着させている。装飾ではなく、構造としての左官。その姿勢が、このデコリエ仕上げに静かに刻まれている。


