触れずに伝える強度 ―― DISEL什器・デコリエ仕上げ

ブランド什器に求められるのは、雄弁さではない。置かれた瞬間に、その空間がどの思想を纏っているのかが伝わること。DISEL什器に施した内村工業のデコリエ仕上げは、素材の主張を抑えながら、確かな強度と緊張感を内包する左官表現である。デコリエは粒子が細かく、鏝の動きがそのまま面に残る。均質に整えれば無難な仕上げになるが、内村工業はあえて動きを消しすぎない。押さえる力、離す速度、鏝を止める位置。その一瞬の判断が、無言の情報量を什器に与える。視線が滑り、立ち止まり、再び動く。その流れを妨げないための調整が重ねられている。什器は、触れられる前提のオブジェではない。距離を保ったまま、空間の温度を伝える存在だ。照明の当たり方や人の動線によって、デコリエの面は微細な陰影を変え、ブランドの世界観を静かに支える背景となる。

左官は、ブランドの裏側に立つ技術である。内村工業は、アルチザンの身体知を通して、DISEL什器に過不足のない存在感を与え、空間全体の完成度を引き上げている。

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