置かれた瞬間、場が定まる ―― 什器・モールテックス仕上げ



什器は、空間の中で最初に触れられ、最後まで使われ続ける存在である。内村工業の左官によるモールテックス仕上げは、意匠性だけを目的としない。設置された瞬間に空間の重心が定まり、使い込むほどに存在感が増していくことを前提としている。施工では、下地の精度がすべての起点となる。面を整え、角を立て、あえて崩す。その順序と判断は、図面ではなく現場で決まる。鏝の圧、動かす速度、止める位置。その積み重ねが、均質に見える面の中に微細な揺らぎを残し、無機質になりがちな素材に温度を与える。モールテックス特有の高い耐久性と防水性は、店舗什器や住宅家具において大きな信頼性をもたらす。しかし本質は、機能を満たした先にある。光を受けたときの陰影、触れたときの抵抗感。そのすべてが、使う人の身体感覚に静かに作用する。左官とは、仕上げで完結する技術ではない。什器として使われ続ける時間を含めて設計する行為である。内村工業は、アルチザンの身体知を通して、モールテックスを空間に根付く什器へと昇華させている。


