触れられない距離で、伝わる質感 ―― 京都パルコ展・デコリエ仕上げ

展示空間における左官は、長く留まることを前提としない。人は歩き、立ち止まり、また次へ進む。そのわずかな時間の中で、空間の質が直感的に伝わらなければならない。京都パルコ展において内村工業が手がけたデコリエ仕上げは、視線が触れる距離で成立する左官表現である。デコリエは、粒子の細かさゆえに、鏝の動きがそのまま表情として現れる素材だ。均質に整えることもできるが、内村工業はあえて動きを残す。押さえすぎず、逃がしすぎない。その一瞬の判断は、現場でしか導き出せない。光を受けたときに生まれる微細な陰影が、展示物の輪郭を邪魔することなく、背景として静かに支える。展示期間中、照明条件や人の流れは刻々と変化する。デコリエの面は、それらを受け止めながら、時間帯ごとに異なる表情を見せる。主張しすぎないが、確かに存在する。そのバランスこそが、展示空間における左官の役割だ。

一過性の空間であっても、仕上げに妥協はない。内村工業は、アルチザンの身体知を通して、展示という瞬間に、確かな質感と記憶を刻み込んでいる。

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